インプラント治療情報と歯科クリニックの比較検索ポータルサイト

インプラント・メーカーを理解する~メーカーにより異なる長所と欠点

歯科インプラントを製造するメーカーは、国内はもちろん世界中に数百社あるとされています。それだけ多数のメーカーが存在すれば、信頼度の高い低いはもちろん、種類によって長所や欠点が異なるのは当然です。

そこで今回は、代表的なインプラント・メーカーを紹介するとともに、それぞれの特徴を解説します。

インプラント・メーカーの選択で治療方針が決まる

メーカーごとに異なる歯科インプラント製品の特性・品質

歯科治療に使用するインプラントは開発や研究費用に多額の資金が必要になるため、企業の吸収合併や倒産も起こりやすい業界です。しかし一方で、新しく参入する企業も増加傾向にあるとされています。

それだけ多数の企業がかかわる業界なので、同じ歯科インプラントを扱うといっても品質や特性はさまざまです。高品質で安全といわれる信頼度が高いものもあれば、「?」とされる不確かな品質のものもあるのが実情です。インプラント治療を行うにあたり、歯科クリニックや歯科医がどのメーカー、どのインプラントを選ぶかによって治療方針や計画も変わってくるでしょう。

治療内容によっても適合するインプラント・メーカーが異なる

各メーカーの歯科インプラントは、歯を根元から失った場合の治療に有効なインプラント、前歯の治療に向いたインプラントなど特徴が異なります。使用するインプラント・メーカーによって、治療できる対象も異なります。

最近は通常の歯科治療では難しいとされていた症例でも、骨造成を同時に行ったり、抜歯をしてその日に歯科インプラントを埋入するなどのインプラント治療が行われるケースがあります。

骨質が悪くてもインプラントを埋入したり、同じインプラントでも長さや幅の違うインプラントを利用して埋入することもあります。

メーカーごとに異なる歯科インプラント|4つのポイント

歯科インプラントは世界各国でさまざまなメーカーが製造を行っていて、特性もメーカーによって異なりますが、主に4つのポイントによって違いがあります。

  • 表面性状
  • 初期固定
  • 何回法か
  • プラットフォームスイッチング

(1)表面性状|骨との結合の速さに影響

表面性状とは、インプラントの表面の状態のことです。インプラントは骨と結合しやすいよう、わざと表面がザラザラした状態になっていますが、どの程度粗さがあるかによって、骨と結合するスピードを左右するといわれています。最新のインプラントの中には、表面性状の特性によって、埋め込みから固定するまでの期間が3~4週間ほど短縮できるものも出ています。

(2)初期固定|インプラント埋入時の安定感

インプラントがしっかり骨と結合するには、埋入した時点ですき間なく密接に骨に固定できているかが重要です。位置や角度が正しくないとその上に人工の歯を取り付けるのに問題が生じるのはもちろん、事故につながる可能性もあるからです。

メーカーはそれぞれ埋入時に緊密な固定ができるよう、形状に工夫を凝らしています。例えば手術時に斜め方向でもインプラントを埋入できるようなものや、埋入時に力を入れすぎてもインプラントが折れる心配が少なく、角度を補正できるものもあります。

(3)何回法か|インプラント手術を1回で済ますか2回に分けるか

インプラントの手術は、主に1回法と2回法とに分かれます。

1回法はインプラントを埋入した時点で粘膜からインプラントの頭が出ている状態にする方法です。2回法は、最初の手術ではインプラントを粘膜の下に完全に埋め込み、インプラントが骨と結合してから再び手術を行い、人工の歯との連結部分にあたるアバットメントという器具を装着する方法です。一般的には2回法が行われることが多いといわれています。1回法だと前歯のような見た目の仕上がりを求める部分の治療には不利とされるためです。

(4)プラットフォームスイッチング|インプラント治療後の骨吸収を起こしにくくする

プラットフォームスイッチングは、埋入するインプラント(人工歯根)と接合するアバットメントの面が、インプラントより一回り小さくなっているもののことを言います。アバットメントとは、インプラントと人工の歯との間に入る連結部分のことです。

一回り小さくなることで、ぴったり接合せず多少ずれるため、万が一細菌が侵入しても骨まで届きにくくなり、骨吸収を起こしにくくするといわれています。

信頼度の高い世界的インプラント・メーカー 4社

数あるインプラント・メーカーの中でも、現在は主に4つのメーカーが代表的な存在です。それぞれ高品質のインプラントといわれ、信頼度は高いメーカーです。信頼度が高い分、高価格にはなるものの、品質が確かということで「安心料」という面も大きいようです。

  • ノーベルバイオケア社(スウェーデン)
  • ストローマン社(スイス)
  • アストラテック社(スウェーデン)
  • ジーマーデンタル社(アメリカ)

国産のインプラント・メーカーで高精度なものも

安価なインプラントの中には有害物質を含むリスクなど、品質に不安な部分があるため、日本国内の歯科クリニックでも、前述したメーカーのインプラントを活用するケースが多いです。

ですが、国内でも京セラメディカル社や、プラトンジャパン社のインプラントは高精度といわれ、選択する歯科クリニックもあります。特に京セラメディカル社のPOIEX インプラントは、日本で最も歴史がある、国産ではシェアナンバーワンといわれています。

こちらも読まれています

ノーベルバイオケア社のインプラント

ブローネマルクインプラント|世界初の実用インプラント

スウェーデンのノーベルバイオケア社が製造するブローネマルクインプラントは、ほかのインプラントが作り出される基盤となった世界で初めて実用化されたインプラントです。世界的に最も知名度があり、シェア率も高いインプラントのひとつです。

ブローネマルクというのは、開発者であるブローネマルク教授の名前を取ってつけられました。

ブローネマルクインプラントの特徴は、傾斜部分への埋入も可能なほど形状に工夫が凝らされていていて、初期固定がしやすいことです。表面性状も骨と結合しやすい状態なので、難しい治療にも扱いやすいといわれています。ブローネマルクインプラントからは、骨質が良くない場合に有用な、ノーベルスピーディー・グルービーインプラントも作り出されています。

ノーベル・リプレイスインプラント|世界中で使われるインプラント

ノーベル・リプレイスインプラントは、ブローネマルクインプラントと同じくノーベルバイオケア社のインプラントです。ステリオスという会社を吸収合併して作られるようになり、リプレイス・セレクトとも呼ばれます。ノーベル・リプレイスインプラントは、ブローネマルクインプラントのデメリットである、隣接する歯が天然の歯の場合埋入しづらい点や、形状から手術器材が多く複雑になるなどの欠点を補えるのが特徴です。インプラントの埋入に必要な器材が簡便化され、ブローネマルクインプラントとも共用できるように作られています。使いやすさから、現在は世界中で最もシェア率の高いインプラントといわれています。

ノーベルダイレクトインプラント|骨吸収が起こりにくいインプラント

ノーベルバイオケア社には、ミック・ドラグー博士開発のノーベルダイレクトというインプラントもあります。ノーベルダイレクトインプラントは、1回法用のインプラントで、インプラントとアバットメントが一体化したものになります。一体化していることで骨吸収が起こりにくいのがメリットです。非常に小さいサイズのインプラントもあるので、下アゴの前歯や上アゴの側切歯などにも埋入が可能です。

ノーベルダイレクトインプラントは欠損した歯の本数が1~2本で、骨の状態がいい場合に使用する目的でつくられていますが、埋入器具はノーベル・リプレイスインプラントと共用です。もし手術中にノーベルダイレクトインプラントの埋入が難しいと判断された場合は、ノーベル・リプレイスインプラントに切り替えることもできるのは利点のひとつです。

ストローマン社のインプラント

ストローマン・インプラント(ITIインプラント)

以前はITIインプラントとも呼ばれたストローマン・インプラントは、スイスのベルン大学とストローマン研究所との協力により開発されたインプラントです。ノーベルバイオケア社と同じく世界中でシェアされている代表的なインプラントです。

ストローマン・インプラントの特徴は、特に骨との結合スピードが速いことです。種類によっては、他社で骨と結合するまで12週以上かかるのに対し、最短3~4週での結合が可能といわれています。

ストローマン社は世界で初めて表面を粗くしたインプラントを開発した企業といわれています。世界初の技術を開発しただけあって、現在もストローマン社のインプラントは、表面性状が他メーカーより一歩抜きんでて優れているといわれています。加えてインプラント自体が比較的小さいので、他メーカーより日本人のアゴ骨の形に適することも多いようです。

豊富な臨床データに基づくインプラントを提供している

ストローマン社は豊富な臨床データを保持し、それに基づいた研究を重ねていることも特筆すべき点です。メーカーの中には科学的根拠が薄いインプラントを製造しているケースもあります。他のメーカーと比較した場合、ストローマン社は科学的根拠をしっかりと持つ、信頼性の高いインプラントを提供していると考えられます。

さまざまなインプラント治療に使える可能性がアップ

ストローマン・インプラントは1回法で使われるのが基本なので、審美性を求める部分の治療や骨造成が必要な場合には不利な面がありました。ですが、現在はスイッチングできるインプラントも開発され、角度補正できるものも作られています。日本ではまだ認可が下りていないものもありますが、歯科クリニックによってはストローマン社のインプラントでさまざまな症例に対応しやすくなっています。

アストラテック社のインプラント

ネジが緩みにくく結合スピードが早いインプラント

アストラテック社は、スウェーデンで製造されているインプラント・メーカーのひとつです。古くから世界で使用されてきたメーカーなので、実績も豊富です。日本でも1996年に認可が下りて以来、広く使われています。

アストラテック社のインプラントはネジが緩みにくく、骨との結合スピードが速いのが特徴です。

骨吸収も比較的少ないといわれています。

メーカーの考えとして、骨に圧迫をかけすぎることを避け、あえて初期固定を追求しない姿勢なので、前歯の治療に使いやすいともいわれています。

ジーマーデンタル社のインプラント

カルシテックインプラント|高精度なHAインプラント

アメリカにあるジーマーデンタル社のカルシテックインプラントは、HAインプラントの中でも精度が高いといわれるインプラントです。

HAインプラントはインプラント治療の期間を短縮できるのが大きなメリットです。「HA」は「ハイドロキシアパタイト」の略で、骨の無機質の大部分を占める物質のことです。インプラントの表面をハイドロキシアパタイトでコーティングしたものになります。

コーティングすることでインプラントと骨との結合を促進し、結果的に治療の短期完了を可能にします。

骨造成や、歯の欠損が多く全体的な治療が必要な人には適したインプラントといわれています。上あごなど骨密度が低い部分にも用いられることが多いです。

ただしHAインプラントは治療後にトラブルが起こるリスクが他のインプラントに比べ高めともいわれているので、こまめなケアや検診は必須です。

その他のインプラント・メーカー

バイオメット3i(スリーアイ)インプラント

3i(スリーアイ)インプラントは、アメリカのバイオメット3i社が製造するインプラントです。3i(スリーアイ)インプラントは、ブローネマルクインプラントを模倣したインプラントですが、さまざまな治療に使えるというブローネマルクインプラントの長所と、骨と結合しやすいという特徴を併せ持っています。

加えて、3iインプラントはノーベルバイオケア社に次いでインプラントの種類が豊富なことも特徴のひとつです。種類によっては斜めにインプラントを埋入する「傾斜埋入」や歯を根元から失った場合の治療にも対応できるのが大きなメリットです。角度補正が30°単位と細かく調整できるものもあり、難しい治療にも対応できるインプラントであることから、世界的にも広いシェアを誇るインプラントです。

オステムインプラント

オステムインプラントは、韓国の代表的なインプラント・メーカーのひとつです。オステムインプラントは、ノーベルバイオケア社やストローマン社、アストラテック社の長所をまとめて持つ、いわゆる「いいとこどり」のインプラントといわれています。

日本人を含めアジア人は欧米人に比べ骨量が少ないとされますが、オステムインプラントはアジア人に適合しやすいよう、太く短いインプラントのラインナップがあるのが特徴です。

通常なら手術より先にインプラントが埋め込めるような骨の状態になるよう、骨移植や骨造成の治療をしないといけない場合も、オステムインプラントを使えば治療せずに手術できるケースもあるようです。表面性状も優れているため、骨との結合もスムーズといわれています。

ただし、小さい種類のオステムインプラントを使用する場合は、破損トラブルが起こったケースもあるようなので、歯科医と十分相談が必要です。

こちらも読まれています

インプラント治療での歯医者選びはメーカーにも注目を

メーカー選びには治療方針があらわれる

インプラントを製造するメーカーは多数存在しますが、メーカーや種類によって難しい治療に対応できるインプラントもあれば、審美面を高めるのに適したものなど特性は異なります。インプラント・メーカーの選択が治療方針に影響を与える部分は大きいと考えられます。

その上で、自分の体にインプラントという異物を埋め込むインプラント治療では、信頼できるメーカーか、安全かどうかが重要なポイントです。より安心して治療を受けるために、代表的なインプラント・メーカーを扱う歯科クリニック、歯科医を探すことは有効な手段のひとつです。世界的に広くシェアされているメーカーのインプラントは、高品質で信頼できるものと考えられるからです。どのインプラント・メーカーを使用するかというのは、手術前の同意書に書かれているはずです。必ずチェックし、納得した上で治療を進めましょう。

インプラントに関する記事一覧