先天性欠損(欠如歯)のインプラント治療。保険適用が認められる条件は?
先天性欠損は、生まれつき永久歯が欠損している症状のこと。
先天線欠如歯を治療する方法は複数ありますが、中でも近年保険適用範囲が増えた「インプラント治療」が注目されています。
今回は、先天性欠損の治療について、治療方法やインプラント治療が保険適用になる条件などを解説していきます。
先天性欠損をインプラント治療で改善していきたい方は、ぜひ参考にしてください。
先天性欠損とは
先天性欠損とは、冒頭で解説した通り「生まれつき永久歯が欠損している症状」のことです。
はっきりとした原因は現時点では明らかになっていませんが、何らかの理由で胎児の段階で歯の「種」である「歯胚」が形成されないことで、先天性欠損となります。
生まれつき永久歯が欠損している症状のこと
複数の歯が足りない場合もあれば、一本だけが先天性欠如歯になる場合も。同じ先天性欠損でも、人によって状況は異なります。
多くの場合、大人になっても永久歯が生えてこなかったり、乳歯が抜けなかったりすることで先天性欠損に気が付くようです。
先天性欠如歯の治療方法
先天性欠如歯の治療方法は、主に4通りあります。
- 歯列矯正
- ブリッジ治療
- 部分義歯
- インプラント治療
歯列矯正
先天性欠如歯の数が少ない場合は、歯列矯正で治療できるケースがあります。
歯列矯正は、歯並びを整えるために歯を抜いて、位置を修正したい歯器具で歯の位置を少しずつ矯正する治療法。
よって、もともと歯が少ない場合も、先天性欠如歯の位置や本数にもよりますが、他の歯との隙間を矯正で整えられます。
先天性欠如歯が少ない場合に適用できる治療法
先天性欠如歯を歯列矯正で治療できるのは、欠けている歯が少数の場合に限られます。
たくさんの歯がない場合は、隙間の調整でカバーできないため、他の治療法を検討することになります。
また、先天性欠損が判明してすぐの若いうち(10代など)でないと、歯が柔軟に動かずに矯正が難航する可能性も。
歯列矯正で治療を受けるのであれば、早いうちからの受診・治療が大切です。
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ブリッジ治療
ブリッジ治療とは、歯を補いたい部分の両側の歯を削り、人工歯のかぶせものをする方法です。
複数の先天性欠如歯がある場合にもある程度適用でき、外科的治療を必要としないため比較的治療費も安く、手軽に受けられます。
先天性欠如歯の両側にある歯を支えにして義歯をつける方法
ブリッジ治療は補いたい部分の両側の歯を削り、義歯をかぶせて支えとするため、先天性欠如歯の両側にある歯が健康で丈夫である必要があります。
また、健康な歯を削ってしまうため、その後のケアを怠ると歯周病や虫歯になるリスクも。
手軽に行える一方で、デメリットもあるため、ブリッジ治療を行う場合は慎重に検討しましょう。
部分義歯(入れ歯)
部分義歯とは、いわゆる「入れ歯」のこと。
1本でも、複数の歯が欠損している場合でも、費用面・期間面の両面において、手軽に治療が受けられるのがメリットです。
費用面・手軽さは最も優れた方法
ただし、インプラントや自分の歯と比較すると、歯の支えがないため噛む力は弱く、毎日のケアにも気をつかわないと、義歯と歯の間に汚れがたまり口臭の原因になってしまうデメリットも。
とはいえ最も手軽な方法ではありますので、簡単に先天性欠損を治療したい人や、ひとまずほかの治療法を検討する間の処置として義歯をつけておきたい人にはおすすめの治療法です。
インプラント治療
インプラント治療は、顎の骨に穴をあけ、そこにインプラント体を埋め込み、義歯を取り付ける治療方法のこと。
先天性欠如歯がある場合も、義歯をしっかりと顎に固定する方法のため、自分の歯のようにしっかりと噛むことが可能です。
抜群の審美性としっかりと噛めることがメリットの治療法
顎の骨に直接固定して義歯をとりつけるため、ぱっと見てもインプラントとはわからない審美性の高さは大きなメリットです。
費用面や治療期間は他の治療法と比較するとデメリットですが、長い目で見て生活の質を上げたい方にとってはおすすめの治療法です。
とはいえ、顎の骨が成長途中ではインプラント治療ができないため、成人してからしか治療できないという面もあります。
インプラント治療を受けたい場合は、若いうちは入れ歯などほかの治療法で補い、主治医と相談しながら治療方針を決めていきましょう。
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先天性欠如歯に保険が適用される条件
先天性欠如歯の治療は、入れ歯などの通常の歯科治療であれば保険適用されますが、インプラント治療を受ける場合は適用条件があります。
保険が適用される条件は、以下の2点を両方満たす場合です。
- 先天性欠損(生まれつきの歯の欠損)が6歯以上ある
- 先天性欠如歯が連続して4歯あるいは5歯以上ある
合計6本以上+顎の骨の3分の1以上の歯が連続して欠損すると保険適用
ヒトの歯の数は上顎に16本、下顎に16本の合計32本です。
顎の3分の1以上の歯が連続して欠損しているとなると、噛む歯の1/3がない状態なので、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
よって、先天性欠損の中でも「保険適用」とされています。
保険適用にならない場合は実費での治療
逆に、これら2つの条件を満たさない場合は、インプラント治療など高額な治療では先天性欠如歯が複数あっても「保険適用外」となります。
治療内容によっては高額になってしまうため、主治医としっかりと相談し、納得のいく治療方針を決めていきましょう。
保険適用で受けられるインプラント治療
保険適用で受けられるインプラント治療は「広範囲顎骨支持型装置埋入手術」のみ。
一般的にはインプラント治療と聞くと、一本一本インプラント体を埋め込み、義歯を取り付ける方法をイメージしますが、この方法ではインプラント体を数本埋め込み支えにして、複数本の義歯の土台を装着します。
逆に言えば、この方法以外でのインプラント治療は保険適用外になるため、症状が保険適用の条件に該当していても実費での治療です。
先天性欠如歯のインプラント治療にかかる費用
ここでは、先天性欠如歯のインプラント治療にかかる費用を、保険適用外と保険適用のケースに分けて解説します。
- 保険適用外の場合
- 保険適用の場合
保険適用外の場合
保険適用外でインプラント治療を受ける場合、インプラント1本当たりの費用は20~50万円と、治療を受ける歯科医院や素材、手術の手法によって大きく異なります。
インプラント1本あたり20~50万円の費用が必要
先天性欠損が多数ある場合、保険適用外ですべてを治療しようと思うと、治療費用は100万円を超える可能性も。
ただし、歯科矯正などほかの治療法と併用しながら、どうしても足りない部分はインプラントで補うなど、治療方法を工夫していけば費用を抑えられる可能性もあります。
保険適用の場合
保険適用の場合、適用できるのは「広範囲顎骨支持型装置埋入手術」のみとなります。
広範囲で先天性欠如歯がある場合に適用される方法ですが、保険適用の場合は原則3割負担。
ですが、実際にはそれでも治療費が数十万円となるケースもあるため「高額医療費制度」で払い戻しを受ければ、費用面の負担は大きく減らせます。
世帯によりますが、一般的な家庭では、手術のみで考えると10万円前後の負担で済ませられる可能性があります。
ただし、保険の適用範囲外の治療を併用した場合、その部分は当然ながら実費請求です。
最終的な費用面がどうなるかは、必ずカウンセリング時にご確認ください。
保険適用でインプラント治療ができる病院
保険適用でインプラント治療を受ける場合、どこの病院でも受けられるわけではありません。
条件を満たした病院でのみ、保険適用で治療が受けられます。
保険適用でインプラント治療ができる施設の条件
保険適用でインプラント治療を受ける場合、施設の条件としては以下の通りです。
実施施設基準
- 歯科または歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること。
- 当該診療科に係る 5 年以上の経験および当該療養に係る 3 年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2 名以上配置されていること。
- 病院であること。
- 当直体制が整備されていること。
- 医療機器保守管理及び医薬品に係る安全確保のための体制が整備されていること。
引用元:広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴の保険適用について(PDF)|公益社団法人日本顎顔面インプラント学会
病院とは、20人以上の患者を入院させるための施設を有している必要がありますので、小規模のクリニックでは保険適用で治療を受けられません。
顎の骨の3分の1以上が先天性欠如歯の場合、手術も決して簡単なものではないため、保険適用の施設基準は厳しいものになっています。
保険適用で先天性欠損のインプラント治療を受けたい場合、施設が保険適用の対象となっているか、よく確認してから治療を受けましょう。
まとめ
先天性欠損は、生まれつき永久歯が生えてこない状態のこと。先天性欠如歯がある場合、治療方法としては主に4種類あります。
- 歯科矯正
- ブリッジ
- 入れ歯
- インプラント
それぞれメリット・デメリットがあり、すべての面で良い方法というものはありません。
近年、インプラント治療でも、先天性欠如歯が6本以上・顎の3分の1以上の部分が連続して欠損しているという条件が合致すれば、保険適用となりました。よって、治療の選択肢は広がったと言えます。
先天性欠損で悩んでいる方は、まずは希望の治療が受けられそうな歯科医院でカウンセリングを受け、じっくりと治療方針を検討し、ぜひ納得のいく治療を受けてくださいね。
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