インプラント治療に抜歯は必要?治療の方法と流れ、期間も解説
インプラント治療は一般的に「失った歯の代替」として行われますが、中にはもとある歯を抜いてインプラント治療を行うケースも。
今回は、抜歯を伴うインプラント治療について、抜歯が必要になるのはどんなケースか、抜歯を含めたインプラント治療の方法や流れについて解説します。
これから抜歯をしてインプラント治療を行おうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
インプラント治療で抜歯が必要なケース
インプラント治療で抜歯が必要となるのは、歯の根や一部が残っているケースです。
歯の根や一部が残っている場合は抜歯が必要
冒頭でも解説した通り、インプラント治療は「失った歯」を補うための治療法。
とはいえ、残っている歯に問題がある場合には、その限りではありません。
歯を完全には失っていない場合でも、
- 虫歯がひどい
- 歯として機能していない
- 歯が欠けている
- 歯の根しか残っていない
など問題があるのであれば、まずはその問題のある歯を抜いてからインプラント治療へと進みます。
インプラント治療のための抜歯、痛みや腫れはある?
インプラント治療のための抜歯は、基本的には一般的な抜歯と痛みや腫れは変わりません。
神経や血管が多く接しているような歯を抜く場合には、大きく腫れたり痛んだりしますが、まわりに干渉の少ない歯を抜く場合には、軽い腫れや痛みで済みます。
抜歯直後や手術中は痛みがありますが、処方された痛み止めを飲めばおさまることがほとんどです。
2~3日ほど痛みが続くケースがありますが、その後は徐々に痛みが治まり、気にならなくなってくるのが普通です。
腫れや痛みの具合には個人差も
ただし、腫れや痛みは個人差が大きく、必ず軽く済むとは一概に言えないのも事実です。
痛みや腫れの悪化をできるだけ防ぐためにも、抜歯後の歯科医師からの注意事項はしっかりと守るようにしましょう。
インプラント治療で抜歯は絶対に必要?
インプラント治療で抜歯は絶対に必要かといえば、その限りではありません。
たとえば、残っている歯が虫歯になっていたとしても、必ずしも選択肢は「抜歯」だけではありません。
抜歯が必要となるのは、治療したい部分に残っている歯が「ほかの治療法がないほど機能が落ちている」場合、もしくは患者本人が、歯が残っていてもインプラント治療を強く望んでいる場合のみです。
抜歯を伴うインプラント治療が最適か、歯科医と入念な相談を
歯の中心部まで虫歯などが侵食していなければ、健康な部分の歯を一部残し、かぶせものをするという選択肢もあります。
よって、抜歯をする前に、インプラント治療という選択が合っているのか、それともほかの治療法のほうが向いているのか、納得いくまで歯科医師と相談しながら決めていきましょう。
逆に、歯としての機能が完全に失われていないにも関わらず、他の選択肢を無視してインプラント治療のみを進めてくる歯科医院は要注意と言えます。
抜歯後にインプラント治療を行う方法と流れ
抜歯後のインプラント治療は主に2通りあります。
それぞれの治療法について、簡単に解説します。
- 2回法(抜歯待時埋入法)
- 1回法(抜歯即時埋入法)
2回法(抜歯待時埋入法)
2回法は、文字通り手術を2回に分けて行う方法のこと。
「抜歯を伴うインプラント治療」では、安全性が高く一般的な方法です。
手術を2回に分けて行うため、治療期間が長くなりますが、感染リスクが少なく適用範囲が広いのが特徴です。
2回法(抜歯待時埋入法)のメリット
抜歯を伴う2回法のメリットは、以下の通りです。
- 顎の骨や歯茎の状態が悪くても適用可能
- 感染リスクが下がる(抜歯後治癒してから治療するため)
- 土台(歯茎と顎の骨)を整えてから手術を行うため安全性・安定性良好
2回法では、治療期間をおいてからインプラント治療に入るため、期間中に骨造成や歯茎の移植などの手段で土台を良い状態に治療することが可能です。
よって、歯周病や顎の骨が薄いなど、インプラント治療に適さない条件下でも適用できます。
抜歯を伴うインプラント治療の場合、1回法では条件がそろわないと適用できないため、2回法が一般的となっています。
2回法(抜歯待時埋入法)のデメリット
2回法のデメリットは、以下の通りです。
- 治療期間が長い(半年前後が一般的)
- 手術を2回(抜歯を含めると3回)行うため患者の負担が大きい
- 抜歯後治癒期間中の審美性が悪い
2回法は、抜歯後に歯茎や骨の状態を整えてから2回にわけて手術を行う方法です。
よって、必然的に治療期間が長くなり、手術を複数回行うため患者の身体的負担が増えてしまうのがデメリット。
また、抜歯後の治癒期間中は、位置によっては歯がないことが分かりやすいため審美性が損なわれてしまうのも気になるポイントです。
2回法の手術法自体の詳細は、以下のリンクで解説しています。
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1回法(抜歯即時埋入法)
1回法(抜歯即時埋入法)は、名称通り抜歯手術の際に、1回でインプラント体の挿入とアバットメントの取り付けまで完了してしまう治療法です。
抜歯を伴う手術の場合は、インプラント埋入時に骨補填材でインプラント体のまわりの組織を補うことで、治癒を促進し、感染リスクを下げて行うケースが多くあります。
抜歯を伴うインプラント治療においては2回法が主となっており、比較的新しい手法ですので、適用範囲や手術できる歯科医院が限られています。
1回法(抜歯即時埋入法)のメリット
1回法(抜歯即時埋入法)のメリットは、以下の通りです。
- 外科手術が1回で済む
- 治療期間が短い
- 治療期間中の審美性に優れている
抜歯後に即日インプラント体をいれるため、治療期間が短く、患者の普段が最小限で済むことが最大のメリットです。
また、治療期間中、歯(義歯を含む)がない期間がないため、見た目を気にする方でも安心と言えます。
1回法(抜歯即時埋入法)のデメリット
1回法(抜歯即時埋入法)のデメリットは、以下の3点です。
- 歯茎や顎の骨が健康でないと適用できない
- 細菌感染のリスクは2回法よりも高い(治癒期間を待たないため)
- 治療できる歯科医院や歯科医師が限られる
抜歯を伴う1回法は、その名の通り一度でインプラント体からアバットメント(中間器具)まで取り付けを行うため、歯茎や顎の骨の状態が良好でないと適用できません。
また、インプラント体の埋入時に骨補填材を利用し、感染予防のためメンブレン(膜)で覆うなど技術的にも比較的新しい手法であるため、治療できる医師や医院が限られるのもデメリットと言えます。
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抜歯からのインプラント治療、2回法と1回法のどちらが良い?
抜歯からのインプラント治療を行うのであれば、患者の負担のみ考えれば「1回法」がおすすめです。
1回法は、2回法と比較して治療期間が短く、手術の回数が少ないため、感染リスクが抑えられさえすれば、患者にとってメリットの多い方法と言えます。
患部の状態が悪い場合は2回法となるのが通常
ただし、顎の骨や歯肉の状態が悪いと1回法の適用は難しいため、必然的に2回法が適用されるのが通常です。
まずは自分の歯肉や顎の骨の状態を加味しながら、どちらの治療法が適用できるか歯科医師とよく相談していきましょう。
抜歯後、インプラントを埋入するまでの期間【状況・条件別】
抜歯後にインプラント体を埋入できるまでの期間は、口内の状況や条件次第で変わります。
ここでは、抜歯後、いつインプラントを埋入できるのか、主な状況別にまとめてみました。
抜歯後埋入までの期間 | 条件 |
---|---|
抜歯即時埋入 |
|
抜歯1~2か月(4~8週間)での埋入 |
|
抜歯後3~5か月での埋入 |
|
抜歯後6か月以上での埋入 |
|
抜歯即時埋入
抜歯後、即時インプラント体を埋入するケースも近年増えています。即時埋入できる条件としては、大きく以下の2点があげられます。
- 外側(唇側)の顎の骨の厚みが一定以上保たれていること
- 歯茎の状態が健康であること(歯周病などがなく、歯肉が厚い)
以上の条件を満たす場合に、抜歯即時埋入に対応できる歯科医院に限り受けることができます。
抜歯後即時埋入では、骨誘導再生法などインプラント体埋入後に骨などの土台が安定するような術式を併用できる、技術のある歯科医師でないと手術が難しく、受けられる歯科医院は限られます。
抜歯1~2か月(4~8週間)での埋入
抜歯後のインプラント体即時埋入が難しい場合には、原則抜歯1~2か月後にインプラント体を埋入します。適用条件としては、以下の通りです。
- 何らかの理由で抜歯後即時埋入が難しい
- 抜歯後1~2か月で歯肉の移植や骨造成手術で土台を整えられる状態である
抜歯即時埋入はまだ適用できる病院や医師が少ないため、健康な歯肉や骨の状態でも、抜歯後に土台の状態を整えて1~2か月してからインプラント体を埋入するケースもあります。
抜歯後3~5か月での埋入
抜歯後、土台となる顎の骨の損傷・欠損が大きく、抜歯後1~2か月ではインプラント埋入まで到達しないと予想された場合、抜歯後に骨補填材や人口骨を抜歯窩に入れて骨吸収を抑える「ソケットプリザベーション」を行い、抜歯後3~5か月かけて土台の治療後にインプラント体を埋入するケースもあります。
適用条件としては、以下の通りです。
- 抜歯後の顎の骨の損傷や欠損が多く、ソケットプリザベーションを行った
- 3~5か月後には骨と歯肉の回復が十分に行われる
ソケットプリザベーションを行ったとしても、ほとんどのケースでは5か月以内に埋入を行います。
抜歯後6か月以上での埋入
抜歯後3~5か月では骨の回復が難しい場合、骨増生手術を行い、骨が安定する半年後以降にインプラント埋入を行うケースもあります。
条件としては、シンプルですが以下に当てはまります。
- 6か月以上の時間をかけ、骨造成・骨増生を行い顎の骨の状態を安定させる必要がある
一般的には、抜歯後半年以内にインプラント体を埋入することがほとんど。
十分な時間をかけ、骨の状態を安定させたいときのみ、半年以上の回復・治療期間をおいてから埋入が行われます。
逆に言えば、そのようなケース以外では半年以上の期間をかけることは原則ありません。
抜歯後のインプラント治療方針を決める基準
抜歯後のインプラント治療方針を決める基準としては、以下の3点がポイントとなります。
- 骨の厚み
- 周囲の歯茎の状態
- 抜歯後、インプラント以外の選択肢も
骨の厚み
抜歯後のインプラント治療に際して、治療箇所の骨の厚みがどのくらいあるかは、「1回法(抜歯後即時埋入)」か「2回法」治療方針の選択に影響します。
骨の厚みが十分に保たれていないとインプラント体の固定が安定しないため、1回法による治療は難しくなります。
よって、事前にCTで骨の厚みを測定し、1回法に耐えうるほどの骨の厚みが確保されているか、そうでないか、確認を行うのが一般的です。
周囲の歯茎の状態
抜歯後、歯肉の状態が悪く、炎症がおきていたり、歯周病になっていたりすると、抜歯後即時のインプラント体埋入はできません。
まずは歯肉の状態を、歯茎の移植を行ったり、清潔に保ち歯肉の回復を待つなどして、土台としての歯茎の状態を整えてから「2回法」を行います。
逆に、歯茎の状態が良ければ「1回法」で手術できる可能性が高くなります。
抜歯後、インプラント以外の選択肢も
歯の状態が悪く、抜歯をした後、必ずインプラント治療を受けなくてはいけない、という訳ではありません。
インプラント治療は、治療後のQOLは上がるものの、費用面や患者の肉体的負担も大きく、状況によっては他の治療法が適している場合もあります。
費用面などの負担が少ない保険適用の治療法が適している場合も
たとえば「ブリッジ治療」や「入れ歯」などは保険適用で、費用負担が安く、治療期間も短く済みます。
本物の歯のようにしっかりと噛むことができなくても、とりあえず見た目が目立たない義歯さえあれば大丈夫、という場合には、負担の少ない保険適用の治療法をまずは試してみるのもいいでしょう。
保険治療を行った後、やはりインプラント治療を受けたければ後からでも受けられますので、まずは本当にインプラント治療が自分にとって有益なのか、じっくりと歯科医師と相談して方針を決めてくださいね。
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まとめ
インプラント治療では「失った歯のかわりに埋め込む」イメージが強いですが、元ある歯を抜歯してから治療を行うケースもあります。
抜歯後のインプラント治療は、大きく分けて「1回法」「2回法」の2通りですが、顎の骨の厚みや歯茎の状態、治療を行う歯科医師のスキルなどによって適した方法は異なるものです。
抜歯後には、インプラント治療以外にも「ブリッジ」や「入れ歯」といった選択肢もあります。
まずはインプラント治療だけにこだわらず、費用面や患者の負担なども加味しながら、信頼できる歯科医師に治療方針を相談して納得のいく治療を受けてください。
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