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インプラント手術中の麻酔「局所麻酔」と「静脈内鎮静法」について

一般的な手術と同様、インプラント治療における手術にも麻酔を使用します。
一口に麻酔といっても、種類は多種多様。歯科治療の内容や患者の状態などによっても使用するものが異なるケースがあります。
今回は日本のインプラント治療で用いられることの多い麻酔の種類や、それぞれの特徴についてご紹介します。

インプラント治療で用いる麻酔の種類

局所麻酔か静脈内鎮静法が一般的

日本におけるインプラント治療では、局所麻酔を使用するか、静脈内鎮静法を併用するのが一般的といわれています。
そもそも麻酔とは、薬物そのものを指すのではなく、麻酔薬を使って無痛状態や反射喪失状態を作り出すことです。
麻酔薬は全身麻酔薬や局所麻酔薬とに大別されますが、多様な麻酔の種類があり、歯医者や歯科医院の方針や患者の状態、治療内容などに合わせて使用する種類は異なるようです。
インプラント治療でも、歯科医院によっては笑気麻酔を使用する場合があります。その他、患者の希望で全身麻酔による手術を行う場合もあります。
それぞれの麻酔のメリット・デメリットは一覧表の通りです。

  メリット デメリット
局所麻酔 ・治療する部位の痛みの緩和
・多くの歯科治療で使用するためトラブルリスクが低い
・手術中の意識が明確
全身麻酔 ・治療する部位の痛みの緩和
・意識がない状態になるので、不安や恐怖の軽減に効果的
・体が動くこともないため、安全な治療が可能
・長時間の治療にも対応できる
・体への負担が大きいため、麻酔前に全身状態の検査が必要
・麻酔中は呼吸管理が必要
・回復に時間がかかるため、入院を伴うケースが多い
・費用が高くなりやすい
静脈内鎮静法 ・リラックス効果の高い薬剤で恐怖や不安が緩和しやすい
・意識はあるため意思表示が可能
・健忘作用により、手術中の記憶が残りにくい
・比較的回復が早いため日帰りが可能
・回復後眠気が残る場合があるため、車の運転ができない
・長時間の治療には適さないケースもある
笑気麻酔 ・緊張を緩和し、痛みを和らげるのに効果的
・麻酔が切れるまでの時間が短いため日帰りが可能
・インプラント手術時の痛みを完全に取り除けないことが多い

歯科医院によっては麻酔専門の医師が在籍していることも

歯科医院の中には、日本歯科麻酔学会専門医が在籍している場合があります。

日本歯科麻酔学会専門医とは、一般社団法人日本歯科麻酔学会が認めた麻酔専門の医師のことです。
歯科麻酔に関する十分な知識や実績・経験を持ち、適切な処置が行えると認められた場合に資格が交付されます。
資格取得には審査・試験に合格する以外に、論文の提出や講習会への参加も必要です。

人によっては、麻酔をすること自体に不安を持つこともあるでしょう。少しでも不安をなくすためにも、歯科医院選びをする際に麻酔専門の医師がいるかどうかをチェックすることも、有効な手段と考えられます。

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局所麻酔|インプラント手術以外でもポピュラーな存在

麻酔針によって薬剤を体内に注入する方法

インプラントの手術で最も一般的に用いられる麻酔は、局所麻酔です。
麻酔針を使って少しずつ薬剤を体内に注入する方法で、痛みの軽減効果が期待できます。インプラント手術以外に、虫歯治療や親知らずの抜歯、歯を削る、神経を抜くなど幅広い歯科治療で、痛みを緩和するために使用されます。
多くの歯科治療で用いられている分、トラブルが起こるリスクも低い麻酔といわれています。

麻酔注入時の多少の痛みを感じる可能性あり

局所麻酔は、注入時に多少の痛みを伴うことがあります。
ただし、最近は痛みが苦手な人のために、極細の麻酔針を用いる歯科クリニックや、コンピューターによって注入時の圧力を調整できるようにしているクリニックもあります。

表面麻酔で注入時の痛みを軽減する方法も

局所麻酔の注入時の痛み対策として、歯科クリニックによっては表面麻酔を導入していることがあります。
表面麻酔は歯茎の表面部分に麻酔薬をかけ、皮膚の粘膜近くを麻痺させることで針を注入する際の感覚を和らげる方法です。
痛いのが苦手、という人は診療時に相談してみるといいかもしれません。

局所麻酔のデメリット|手術中の意識はハッキリしている

局所麻酔をすると、手術する部分の痛みはほとんど感じなくなりますが、手術中の意識は明確なままというのがデメリットです。
痛い、という感覚はなくても意識がハッキリしている分、医師の声、骨を削る音やドリルの振動、圧迫感など、手術の臨場感も感じやすいです。手術中の様子が耳に入ってくることで、不安や緊張が高まる人もいるかもしれません。

静脈内鎮静法|インプラント手術に対する不安感が強い場合の麻酔薬

点滴による麻酔でリラックスした状態で手術に臨める

インプラント手術を行っている歯科クリニックの中には、局所麻酔とともに静脈内鎮静法を選択できる場合があります。
静脈内鎮静法は、点滴によって投与する麻酔薬です。恐怖心や緊張を和らげ、手術のストレスを軽減する効果が期待できます。

静脈内鎮静法は、鎮静・睡眠作用があるのが特徴です。
麻酔が効いている間は眠っているときに近い状態になるため、人によっては手術中の記憶がほぼなくなるというケースもあるようです。

リラックス効果が高い麻酔薬なので、意識がハッキリしたまま手術に臨むのは不安が強いという人も、意識が薄まりうたた寝をしているような感覚で手術が受けられるといわれています。

局所麻酔と併用して使用するのが一般的

静脈内鎮静法は、一般的に局所麻酔と併用して使用されます。鎮静剤自体には痛みをなくす、鎮痛作用がないためです。局所麻酔によって痛みを緩和しつつ、静脈内鎮静法によって手術の緊張やストレスを和らげる効果が期待できるでしょう。

静脈内鎮静法が適したインプラント治療

静脈内鎮静法は手術に対する不安や緊張が強い人だけでなく、治療によって心身ともに負担が大きい患者に対しても使用されることが多いです。
ゆったりと、リラックスした状態でインプラントの手術に臨みやすいことから、過去に歯科治療で気分が悪くなった経験がある人に対して用いることもあるようです。

<静脈内鎮静法が用いられることが多いケース>

  • 全身疾患がある場合
  • オールオンフォーのような治療範囲が広い場合
  • インプラントを埋め込む本数が多い場合
  • サイナスリフトや骨造成などインプラント手術の前に特殊な治療が必要な場合
  • 手術が長時間になりそうな場合
  • 嘔吐反射がある場合

インプラント手術で静脈内鎮静法を用いることのデメリット

静脈内鎮静法を用いることは、インプラント手術における患者の負担軽減に効果的ですが、いくつかデメリットがあることも知っておきましょう。
主なデメリットはいくつかありますが、中でも手術後は車の運転ができないことを知っておきましょう。

静脈内鎮静法は全身麻酔に比べると回復が早く、休憩をとれば日帰りが可能です。
ですが、麻酔薬の影響により、インプラント手術当日はふらつきや眠気を感じやすい傾向があります。歯科医院から自分で車を運転して帰ることは止められる可能性が高いでしょう。
徒歩や公共交通機関の利用もできれば避けるほうがベター、という考えの歯科医院もあるようです。

地域や家庭の状況によっては不便に感じることがあるかもしれませんが、手術後はタクシーを利用するか、家族の運転で帰りましょう。事故が起こるのを避け、安全に帰宅するためです。
歯科医院の中には、送迎サービスを行っている場合もあります。家族の同伴が難しい場合などは利用するといいかもしれません。

その他にも、静脈内鎮静法にはいくつか注意点があるので知っておきましょう。

インプラント手術後は麻酔が切れても安静に

車の運転に限らず、当日は安静に過ごしましょう。
局部麻酔に比べると麻酔の効果が切れるまでに時間がかかりやすいので、激しい運動や遠出も避けたほうが無難です。

すべての歯科医院で選択できるとは限らない

静脈内鎮静法はすべての歯科医院で選択できるとは限らないのが実情です。
インプラント手術に不安を感じる場合は、歯科医院選びをする際、麻酔方法も選択できるクリニックを探すほうがベターです。

インプラント手術代と別料金が発生することもある

静脈内鎮静法の料金は手術料金と別料金になることもあります。インプラント治療全般にいえることですが、静脈内鎮静法の料金も健康保険の適用対象外となり、全額実費になることがほとんどです。
費用について、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

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インプラント手術における静脈内鎮静法と全身麻酔との違い

似たようなイメージを持ちやすい全身麻酔と静脈内鎮静法ですが、特徴は全く異なるようです。

麻酔中の意識がある・ないが大きな違い

静脈内鎮静法と全身麻酔との違いは、手術中に意識があるかどうかです。
全身麻酔の場合は麻酔によって、完全に意識がない状態を作り出しますが、静脈内鎮静法はうたた寝に近い状態にはなるものの、基本的には意識がある状態です。
インプラント手術中も、静脈内鎮静法の場合は医師からの呼びかけに反応したり、意思表示をすることも可能といわれています。
ただし、静脈内鎮静法は健忘効果があるので、インプラント手術中の出来事を覚えていないことも多いようです。健忘効果により、実感的にはあっという間に治療が終わったと感じる患者も多いといわれています。

意識がなくなる全身麻酔は呼吸管理も必要

全身麻酔は手術中の呼吸管理が必要です。体の動きを止めることにより、呼吸も止まった状態になるからです。呼吸管理とは、気管にチューブを通して酸素を送り、全身の状態を常にチェックすることです。

対する静脈内鎮静法では、急激な体調変化などが起こった場合は別として、基本的にインプラント手術中に呼吸管理は必要ありません。

体への負担は全身麻酔のほうが高め

一般的なイメージとして、意識が全くなくなる全身麻酔のほうが楽に感じる人もいるかもしれません。
ですが、一時的とはいえ体の機能が停止する全身麻酔は、体にかかる負担も大きくなりやすいです。
静脈内鎮静法やほかの麻酔に比べ、リスクや副作用の可能性は高まりやすいと考えられます。

全身麻酔は一般的に入院を伴う

静脈内鎮静法と全身麻酔との違いは、インプラント手術後の麻酔からの回復スピードにもあります。
基本的に静脈内鎮静法の場合は、日帰りが可能です。
一方、全身麻酔は安全のため術後は入院が必要になるケースがほとんどです。

希望すれば全身麻酔で手術をしてもらえる場合も

インプラント治療では、全身麻酔が使用されるケースはあまり多くない傾向にあるようです。
ですが、歯科クリニックによっては患者が希望すれば、全身麻酔が可能な口腔外科のある大学病院や、医療施設を紹介してもらえる場合もあるようです。
ただし全身麻酔の場合も静脈内鎮静法と同じく、手術代とは別料金になる場合があります。費用面については事前に確認しておくほうがいいでしょう。

インプラント手術で用いられるその他の麻酔

静脈内鎮静法以外に笑気麻酔を使用する歯科医院も

インプラント手術では、局所麻酔が不安な人のために、静脈内鎮静法ではなく笑気麻酔を使用する場合もあるようです。

笑気麻酔は、吸入器を使って笑気ガスと呼ばれるガスを鼻から吸い込むことにより、緊張を緩和する麻酔方法です。静脈内鎮静法と同様、リラックスして不安を軽減する効果が期待できます。

ガスを吸っている間だけ効果がある麻酔なので、麻酔が切れるまでの時間が短いことも特徴のひとつです。手術後の入院も基本的に必要なく、日帰りが可能です。
ガスを吸入している間は全身管理が必要ですが、吸入を停止すると鎮静状態から回復するため、歯医者自身が手術とともに状態管理を行う場合もあるようです。

基本的には局所麻酔と併用

笑気麻酔は静脈内鎮静法と同様に、局所麻酔と併用するのが一般的です。笑気麻酔は緊張緩和や痛みを感じる度合いを和らげる効果はあるものの、インプラント手術中に生じる痛みを完全に取り除けるほどではないからです。

ただし、笑気麻酔は、手術に対しての恐怖感が非常に強い場合や、全身疾患がある場合などは静脈内鎮静法を使用されるケースのほうがが多いといわれています。

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インプラント手術は局所麻酔が一般的

緊張や不安、治療内容に応じて静脈内鎮静法などを用いる

インプラント手術で使用する麻酔は、局所麻酔や静脈内鎮静法が一般的です。特に局所麻酔はほかの歯科治療でも用いるほどポピュラーな麻酔です。
ただし、局所麻酔の場合は、手術中も意識がハッキリしたままというデメリットがあります。恐怖心が強まる人に対しては、不安を和らげ恐怖心を取り除くために静脈内鎮静法を併用することが多いようです。

静脈内鎮静法は全身麻酔と違い意識は保ちつつ、リラックスした状態を作りだせる麻酔です。麻酔からの回復が早く、日帰りも可能なので全身麻酔に比べ体への負担も少ないでしょう。

インプラントの手術で使用する麻酔はいくつか種類があり、治療内容や患者の身体状態によっても選択が変わってきます。麻酔の種類によっては選択できる歯科医院が限られる場合もあるでしょう。
インプラント治療を受ける際は、どんな麻酔を選択できるかも合わせて歯科医院選びをしてみてはいかがでしょうか。

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