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インプラント周囲炎とは?原因と治療法、周囲炎を予防するポイント

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲が細菌に感染してしまって骨が痩せていってしまうことです。インプラントの治療後、一定期間が経過してグラつきなどが発生した場合、その多くはインプラント周囲炎です。せっかく時間と費用をかけてインプラントを入れたのに、インプラント周囲炎が進行してしまうと維持できなくなることもあります。そのような事態にならないように、インプラント周囲炎に関する正しい知識と、治療方法や予防について知っておきましょう。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎はインプラントの歯周病

インプラント周囲炎とは、前述したとおり、インプラントを埋入した部位の周辺組織(歯肉、骨の部分)が細菌に感染してしまい、破壊されてしまう病気です。原因となる細菌は、天然歯の歯周病と同様のものとされていて、症状も同じです。つまり、天然歯周辺で発生するのが「歯周病」であり、インプラント周辺で発生するのが「インプラント周囲炎」と呼ばれることになります。最終的には歯が抜け落ちてしまう歯周病と同様に、インプラント周囲炎もインプラントの脱落につながります。

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎

インプラント周囲炎は歯周病と同じように進行していきます。まず、歯肉と人工歯の付近にプラークという細菌の塊が形成されます。このプラークはネバネバしていて、歯の表面にしっかりと密着しています。プラークには約600種類の細菌が存在し、その数は1億個から2億個ともいわれています。このプラークの状態であれば、ブラッシングなどで比較的容易に除去できるのですが、時間が経過して唾液成分などにより石灰化すると容易には除去できなくなります。
プラークは、歯肉と人工歯の隙間から徐々に内部に浸透していき、細菌による炎症を発生させます。炎症が歯肉にとどまっている場合をインプラント周囲粘膜炎と呼び、歯肉の腫れや出血、痩せてくるなどの現象が見られます。さらに進行すると、細菌が歯槽骨(顎骨の歯が生えている部分)にまで達して、炎症によって歯槽骨が吸収されてインプラントのグラつきなどの現象が発生します。この段階をインプラント周囲炎といいます。

インプラント周囲炎は歯周病よりも厄介?

インプラント周囲炎は天然歯の歯周病と同様の症状とご紹介しましたが、実は歯周病よりも厄介なものです。その理由は、「進行が早い」という特徴にあります。
天然歯の場合には、歯根に毛細血管や神経が通っていますので、免疫反応が素早く働きます。免疫が歯周病菌を攻撃して病気の進行を緩やかにしてくれるのです。しかし、インプラントの場合は、人工歯根ですから免疫システムがありませので、進行が早いといわれています。進行は個人によって差がありますが、歯周病の10倍も進行が早いとの説もあります。また、歯周病と同様にインプラント周囲炎は症状が出にくく、自覚症状に乏しいという特徴もあります。インプラント治療を受けた方は、相当な注意が必要となります。

インプラント周囲炎の原因

メンテナンス不足

インプラント周囲炎の原因多くは、メンテナンス不足にあります。天然歯の場合と同じく、プラークコントロールがうまくいっていないため、お口の中の環境が悪くなってしまうのです。毎日のブラッシングを丁寧に実施して、お口の中を清潔に保つことが大切です。

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その他の原因

インプラント周囲炎の原因として、メンテナンス不足意外には基礎疾患の悪化や生活習慣も考えられます。

糖尿病

糖尿病は、インプラント治療自体にも影響を与える恐れがあります。創傷治癒不全(そうしょうちゆふぜん)という傷が治りにくい症状が出ることがありますから、インプラント体と骨の強固な結合が得られなかったり、インプラント周囲炎などの感染症を起こしやすい傾向があります。糖尿病と診断されている方は、血糖値のコントロールに気をつけてください。

喫煙

喫煙もインプラント体と骨の結合や、感染症にかかりやすいといった傾向を強くします。タバコに含まれる一酸化炭素やニコチンは血管を収縮させる作用があり、血流を阻害させてしまうからです。また、お口の中の環境も悪化させるといわれています。インプラント治療を受ける前後に禁煙することはもちろんですが、インプラントを入れたら継続的な禁煙を目指してください。

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貧血症状

貧血傾向にある方は、赤血球が減少することによって、細胞に酸素が充分に供給されないことが考えられます。その結果として、細菌に対する抵抗力が低下することがあります。インプラント周囲炎などの感染症には十分注意しましょう。

インプラント周囲炎の治療方法

インプラント周囲粘膜炎の場合

インプラント周囲炎の前段階ともいえるインプラント周囲粘膜炎の治療は、基本的に天然歯の歯肉炎治療と同じです。人工歯と歯肉の間に「歯周ポケット」と呼ばれるプラークが侵入する間隙ができますので、その部分のプラークを取り除き、洗浄をおこないます。インプラントの埋入が深い場合には、上部構造を取り外して治療をおこなう場合もあります。
また、症状が強い場合には抗菌剤などの薬品を投与することもあります。そして、重要なことは症状を繰り返さないことですから、綿密なブラッシング指導や歯科クリニックでの定期検診の間隔を短縮することもあります。

インプラント周囲炎の場合

インプラント周囲の骨が吸収されている場合には、外科的治療をおこなうことがあります。切開をして、インプラント体表面に付着している細菌を除去する手術です。主に4つの方法があります。

スケーラーなどで切削する

チタン製の器具を使用してインプラント体の表面をなめらかにすることで、細菌を除去していく方法です。しかし、骨との境界など、器具が届きにくい部位もあり、難しい面があります。

レーザー照射

インプラント体にレーザーを照射することにより、細菌を除去する方法です。虫歯治療でも使用される「Er;YAGレーザー(エルビウムヤグ)」を使用します。ただし、インプラント体全体にムラなく照射することは困難だともいわれています。

エアアブレーション

エアアブレーションとは、高速で材料を噴射してインプラント体に付着した細菌を除去する方法です。主にβ-TCPという骨補填材が使用されます。短時間で細菌除去ができるといわれていますが、材料の吸い込みなどの問題があります。

フォトダイナミックセラピー

光を受けると効果を発揮する薬剤を歯周ポケットに入れて光照射によって細菌を除去する方法です。新しい治療方法で、注目されていますが、実施している歯科クリニックはまだ少ないようです。

以上のようにインプラント周囲炎にはさまざまな治療方法があるのですが、各治療には欠点もあり、進行してしまうと効果がないこともあります。いちばん重要なことは、インプラント周囲炎にならないようにすることです。

インプラント周囲炎を予防するには

セルフメンテナンス

では、インプラント周囲炎を予防するには、どうしたらよいのでしょうか。一番重要なことは、毎日のセルフメンテナンスをしっかりと実施することです。ブラッシングはもちろんですが、歯間ブラシなどの補助的なものを使用するとより効果的です。また、注意したいのは、インプラントの部分だけを重点的におこなうわけではないということです。お口全体を入念にメンテナンスしなければ歯周病菌は増殖しますから、意味がなくなってしまいます。お口全体を清潔にする努力が大切です。

メンテナンスの指導をしてくれる歯科クリニックを選択

インプラント周囲炎を予防するには歯科クリニックでのメンテナンス、ブラッシング指導を受けることなども重要です。ご紹介したとおり、インプラント周囲炎は自覚症状が少なく、進行が早いですから早期発見には定期検診が効果的です。
しかし、国民生活センターがおこなったアンケートでは、インプラント治療をおこなった36.6%の人が定期的なメンテナンスを受けていないという結果でした。その理由としては「異常や違和感がないから」というものも34.4%ありましたが、「歯科医師から指示がなかった」という理由が27.3%と4分の1以上の割合を占めています。この結果を見ると、歯科医師の中でもメンテナンスの重要性を理解していない場合もあるのかもしれません。インプラント治療の歯科クリニックを選ぶ際には、メンテナンスを重視しているかを充分に確認してください。

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