インプラント治療の失敗例~手術トラブルを避けるための予防対策
機能性の高さや見た目の美しさが魅力のインプラント治療。とはいえ手術を伴う以上、失敗やトラブルのリスクがないわけではありません。今回はこの記事で、インプラント治療で起こり得る失敗の症例やその原因と、トラブルを避けるポイントについてご紹介します
インプラント手術時に起こり得る失敗やトラブル
インプラント治療は、人工歯根となる歯科インプラントをアゴの骨に埋め込む歯科治療です。ほとんどの治療は成功し、患者は快適な機能を手に入れていますが、中には失敗や問題が起こったケースがあるのも実情です。
失敗やトラブルのリスクは、インプラント治療に手術が必要である以上、避けられない問題といえるでしょう。過去に起こった手術時の失敗やトラブルの代表的な症例を見ていきましょう。
歯科インプラントが骨を突き抜けるトラブル
上あごの歯にインプラントを埋入する場合に起こり得る失敗例の多くは、歯科インプラントが骨を突き抜けるというトラブルです。上あごの奥歯の骨の上部には、上顎洞と呼ばれる骨がない空洞部分があります。上顎洞は誰にでもありますが、空洞部分の大小は個人差があります。
上顎洞が大きい人は、無理にインプラントを埋入すると誤って骨を突き抜けてしまうリスクがあります。上顎洞が大きいと骨が薄いことが多く、ちょっとした衝撃でも骨を突き抜ける可能性が高まるからです。
一旦インプラントが上顎洞へ入り込むと、取り出すのは困難です。かといって上顎洞へ落ちたまま放っておくと炎症を起こし、蓄膿症を引き起こすこともあるため、リカバリーが難しい場合は大がかりな再手術が必要になる可能性もあります。
歯科インプラントが神経を損傷するトラブル
下あごの歯にインプラントを埋入する場合の失敗症例には、歯科インプラントが神経を損傷し、麻痺を起こしたケースがあります。下あごの奥歯の骨の下には、下歯槽神経という太い神経が通っています。圧迫したり損傷すると味覚や頬の感覚麻痺が起こります。
神経損傷によるトラブルは、歯科医師の技量不足以外に事前の検査や診療不足から起こることがあります。
血管を傷つけ死亡事故につながった事例も
下歯槽神経には血管も通っており、傷つけると出血するリスクもあります。過去には動脈を傷つけ、大量出血から気道を圧迫して呼吸困難を招き、死亡に至るという事故も発生したこともあります。
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インプラント治療で起こり得る失敗例と原因
インプラント治療の失敗は、手術時だけに起こるとも限りません。治療全体の中で起こりやすい失敗やトラブルの可能性も知っておきましょう。
- インプラントが骨と結合しない
- 痛みや腫れ、しびれなどが長期的に続く
- 細菌感染
- インプラント治療した歯が外れたり破損する
- 見た目や使い心地が悪い
失敗症例(1)インプラントが骨と結合しない
インプラント治療が入れ歯やブリッジなど、ほかの歯科治療に比べて耐久性が高いのは、埋め込んだインプラントがアゴの骨と強く結合するからです。自然な状態に近い噛み心地が得られるのも、インプラントが骨と結合し、固定するおかげです。
インプラントが骨に結合し、固定する状態をインテグレーション(骨結合)といいますが、まれに失敗する場合があります。インテグレーションがしっかりできないと、インプラントのぐらつきや脱落の原因になります。ときには膿が出ることや、痛みを伴うこともあります。
インプラントがしっかり結合するまでには数か月かかりますが、インテグレーションしない場合は一旦除去するケースが多いようです。最悪の場合は改めて手術が必要になる可能性もあります。
インプラントが結合しない場合に考えられる原因
インプラントがアゴの骨と結合しないという失敗は、適切な角度・位置・深さに歯科インプラントが埋入されていない場合に起こることが多いようです。中にはインプラントを埋め込む際に骨を貫通してしたり、アゴの骨に穴を開ける際、ドリルの熱によって骨がヤケドやダメージを受け、結合に失敗した症例もあります。
その他、口は動かすことが多い部位なので、何らかの形でインプラントがずれると、骨が異物と認識し、結合しないこともあるようです。近年では治療技術の進歩によって、インプラントが骨と結合しないという失敗は少なくなっています。しかし、手術を行う医師の技術・経験不足次第では、失敗するリスクはゼロとは言い切れないでしょう。
インプラントが結合してもトラブルがおこるリスクはある
無事にインプラントが骨と結合した場合でも、しばらく経ってからインプラントの一部が歯茎から出てしまう、という失敗の症例もあります。インプラントが歯茎から出る原因には、骨吸収が関係している場合が多いです。
チェックが甘く、インプラント治療ができるだけの骨量や骨の厚み、密度がないまま手術に進んだ場合、骨吸収のリスクは高まるようです。トラブルを避けるためにも、手術の前には丁寧な検査が必要です。
その他、噛み合わせで過度な力がかかる場合にも、インプラントの一部が出てしまうトラブルが起こりやすいといわれています。インプラントが一度歯茎から出てしまうと、元に戻すのは困難なので、一旦インプラントを除去しないといけない可能性が高いです。
失敗症例(2)痛みや腫れ、しびれなどが長期的に続く
インプラントの手術後、数日は痛みや腫れなどの症状が出ることがあります。骨造成治療や複数本のインプラント治療を行う場合も、腫れや痛みなどの症状が出やすいです。ただし、長期的に症状が続く場合は、何らかの治療失敗の可能性を疑ったほうがいいかもしれません。
我慢できないほど強い痛みを感じる場合や、1週間以上痛みや腫れ、しびれが続くときは早急に歯科医院に相談しましょう。
インプラント治療後の長期的な痛み、しびれなどの原因
インプラント治療後、長期的に痛みや腫れ、しびれなどの症状が続く原因には、適切なインプラント埋入ができていない場合が考えられます。適切な位置や深さ、角度に埋入されなかったことで、神経の損傷や圧迫、隣接する歯の歯根にインプラントが触れることによって痛みが起こっているのかもしれません。
その他、歯茎に近い部分のインプラントが骨吸収を起こし、細菌感染をして痛みや腫れ、しびれが生じるケースもあります。
失敗症例(3)細菌感染
インプラント治療が完了したあとに起こりやすい失敗やトラブルのひとつに、細菌感染のトラブルがあります。代表的なのは、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は、インプラントが細菌に感染して炎症が起こることです。インプラントの歯周病ともいえる病気で、初期は自覚症状がほとんどありません。
歯茎の腫れや出血など気づいたときには重症化していることが多い厄介な病気です。重度になると骨吸収が起こり、インプラントの脱落につながるリスクもあります。インプラントの埋入が不適切で膿が出ている場合などは、インプラント周囲炎に気づくのが遅れる可能性もあります。
インプラントが脱落した場合は、一旦除去し再治療が必要です。状態によってはそのままでは治療ができず、骨造成をしてから再手術となる可能性があります。
インプラント周囲炎になる原因
インプラント周囲炎はメインテナンス不足によって起こることが多いです。感染リスクを減らすためには、自宅で行う歯磨きやケアだけでなく、歯科医院での定期メインテナンスが重要です。
自宅や歯科医院でのメインテナンスだけでなく、治療前に歯周病にかかっていないかや、歯周病治療を十分しておくことも大切です。不十分だと、細菌感染のリスクが高まるからです。喫煙や糖尿病なども、細菌感染のリスクを高めるので注意しましょう。
インプラント周囲炎は、治療を行う歯科医院の衛生環境や、インプラント自体が原因になるケースもあります。治療を受ける際は手術室の衛生管理を徹底している歯科医院を選ぶほうがベターです。
骨造成の失敗も細菌感染のリスクに
細菌感染のリスクは、骨造成に失敗した場合に起こることもあります。骨造成は、インプラントを埋め込むのに十分な骨の厚みや量がなく、現状では治療が難しい場合に行うことが多いです。
骨造成には歯科医師の高度な技術と細心の注意が必要ですが、失敗すると増やそうとした骨が細菌感染を起こすリスクがあります。細菌感染した場合は一旦除去しなければならないことが多いです。
失敗症例(4)インプラント治療した歯が外れたり破損する
インプラントの魅力は、一旦治療が終わればメインテナンス次第で長期的な活用ができることですが、中には治療後に歯が外れたり、破損するという失敗例も報告されています。1回程度なら問題ない場合もありますが、何度も頻繁に外れる場合は、根本的な部分で失敗している可能性があります。
インプラント治療した歯が外れる、破損する原因
破損や人工の歯が外れる原因は、噛み合わせの調整不良が問題であることが多いです。インプラントは天然の歯と同じように噛めるのがベストですが、適切な調整ができていないと、力のバランスが偏り、インプラントに過度な負担がかかることがあります。噛み合わせ不良は、インプラントが骨と結合している部分の骨吸収へと問題が発展するリスクもあり、気をつけなければなりません。
その他、埋入した歯科インプラントと、上にかぶせる人工の歯とを連結するアバットメントが緩むことで起こる場合もあります。アバットメントが緩むと、上にかぶせてある人口の歯も緩み、外れやすくなるからです。
失敗症例(5)見た目や使い心地が悪い
インプラント治療の失敗には、治療自体は無事に終わっても、見た目や使い心地に問題が起こるケースもあります。特に前歯のように審美性が求められ部分は出っ歯に見える、他の歯と色が合わないなど見た目の仕上がりに問題が生じる可能性があります。
噛み合わせがうまくいかないという問題も起こりやすいトラブルのひとつです。噛んだときのバランスが悪いとインプラントへの負担が増し、インプラントが骨と結合しない問題や、骨吸収の原因にもなります。
噛み合わせの問題以外にも、息もれ、頬や舌をよく噛む、食べ物がつまるようになるといった機能面でのトラブルが起こる場合もあります。
見た目や使い心地が悪くなる原因
噛み合わせ不良の原因は、インプラントの埋め込み位置と全体の噛み合わせのバランスに問題があることが多いです。その他歯型を取る歯科技工士の技量の問題による場合や、手術前の検査や診断が不十分な場合に起こる場合もあるようです。
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インプラント手術後に生じやすい腫れの期間と術後の注意点
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インプラント治療の失敗を防ぐポイント
インプラント治療における失敗は、患者自身のケア不足によって起こる場合もあれば、歯科医院側の診療や検査不足から起こる可能性もあります。できる限り失敗やトラブルのリスクを減らし、快適にインプラントを使えるようにあらかじめ予防や対策をとることが大切です。
インプラント治療前は納得いくまで相談を
インプラント治療の失敗を防ぐには、治療に入る前に納得いくまで歯科医師と相談をすることが大切です。分からないことは納得いくまで何度も話をしてくれるか歯科医院を選ぶのがベターです。インプラント治療以外の治療の選択肢の提示があるか、治療期間や費用など、治療の内容や計画を丁寧に分かりやすく説明してくれるかなども確認しましょう。
反対に、質問に対してぼやかしたり、しっかりした回答が得られない場合や、無理に治療を進めようとするなど、安心して治療を受けられないと感じる歯科医院は避けたほうが無難です。
インプラント治療を受ける歯科医師の実績も安心材料に
歯科医院によっては広告やホームページを使うなどして、医師がどのような症例に対応したか、症例数や診療実績を公表している場合があります。実績が豊富だからといって、確実に安全とは言い切れませんが、ひとつの目安にはなるでしょう。
過去の実績だけでなく、学会や勉強会に積極的に参加している歯科医師なら、最新の技術を身に着けようと努力している可能性が高いと考えられます。
歯科医院の設備や衛生環境にも注目
インプラント手術の失敗を防ぐには、詳細な検査や的確な治療計画が大切です。治療を受ける歯科医院の診療設備にも注目してみてください。CTスキャンを導入しているか、導入している場合は神経や血管の位置を確認し、手術のシミュレーションもできるような高性能なものかなども確認しましょう。
設備面では、手術を行う場所の衛生環境が整っているかも重要です。細菌感染のリスクを減らすためにも、できれば専用の手術室やクリーンルームがある歯科医院がベストです。
使用するインプラントメーカーも確認
治療を受ける歯科医院で、どのようなメーカーのインプラントを使用しているかを確認することも、治療の失敗を防ぐ対策になります。歯科インプラントを開発・製造しているメーカーは世界中に数多くあります。
各メーカーによってインプラントの機能性には差があり、中には安全性に疑問があるインプラントもあるのも実情です。一方、多くの症例で使用されているインプラントであれば、比較的安全性や信頼度が高いと考えられます。治療を受ける際は、埋入するインプラントとアバットメント、被せる人工の歯まで、どんなインプラントを使うか確認しておきましょう。
アフターケアは充実しているか
インプラントは治療が終われば完了、というものではありません。インプラント周囲炎や噛み合わせ不良など、失敗やトラブルのリスクは治療後もあるからです。予防には定期的なメインテナンスが必要不可欠なので、しっかりとフォローしてくれる歯科医院を選びましょう。
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インプラント治療で失敗する可能性はゼロではない
失敗を防ぎ、安全な治療のために慎重な歯科医院選びを
インプラント治療の症例の中で、失敗や問題が起こった事例はあります。医療技術が進歩し、リスクは大幅に減ってはいるものの、手術をする以上失敗する可能性はゼロとはいかない部分があります。加えて、インプラント治療の場合、手術時だけでなく治療を終えたあとにトラブルが起こることもあります。
治療の失敗を防ぐには、患者自身のケアも大切ですが、信頼できる歯科医院や歯科医師を見つけることが大切です。患者としっかり向き合い、安全で的確な治療をしてもらえるかどうか慎重に見極め、快適なインプラント生活を送りましょう。
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