総入れ歯にするタイミングはいつ?歯の状態・年齢、判断の基準
上顎あるいは下顎、またはその両方に歯がなくなったとき、一番多く選択されている治療が総入れ歯です。
歯が抜け落ちてきたとき、どのタイミングで総入れ歯を考えればよいのか、それは大変難しい判断です。年齢で考えればよいのか、歯の状態で考えればよいのか、今回はそのタイミングについて解説しています。
一方で、総入れ歯以外の治療方法もありますから、それらについてもご紹介していきたいと思います。
総入れ歯にするタイミング・年齢はいつから?
50代にはじまり、60代から高まっていく総入れ歯の割合
厚生労働省が実施した「平成28年歯科疾患実態調査」には、全部床義歯(総入れ歯)を装着している年齢別の分析がなされています。その分析によると、50歳から54歳では0.9%、55歳から59歳では1.6%と少ない割合で推移。60歳から64歳は4.0%、65歳から69歳では8.9%、と高くなっていき70代前半では14.7%、後半では20.1%、80代前半は31.3%、80代後半からは46.3%と高い割合で推移していきます。
全部床義歯装着者の割合 年齢階級(歳) 全部床義歯装着者 15~19歳 – 20~24歳 – 25~29歳 – 30~34歳 – 35~39歳 – 40~44歳 – 45~49歳 – 50~54歳 0.9 55~59歳 1.6 60~64歳 4 65~69歳 8.9 70~74歳 14.7 75~79歳 20.1 80~84歳 31.3 85歳~ 46.3
当然のことですが、高齢の方ほど総入れ歯の割合が多くなっていて、加齢の影響は否定できないでしょう。
しかし、平成5年の調査から比較して、喪失歯の数は非常に改善していて、60代前半を例に取ると平成5年は11.3本喪失していたのですが、平成28年には4.6本と大きく減少しています。
これは虫歯や歯周病を減少させる意識が大きく関わっていると考えられます。
総入れ歯は年齢だけで考える必要はない
上記の数字はあくまで平均ですから、70代、80代になったからといって必ずしも総入れ歯にする必要はありません。日本人は、この20年間で口腔衛生の考え方を大きく変えています。現在、歯がまったくない方は別にして、残存する歯があるのに総入れ歯を考えることはないのです。年齢に関係なく、残った歯を大切に利用して、部分入れ歯やインプラントなどで噛む力を維持できる治療は多くあります。
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インプラント治療に適した年齢は?年齢制限はある?
上顎あるいは下顎、またはその両方に歯がなくなったとき、一番多く選択されている治療が総入れ歯です。歯が抜け落ちてきたとき、どのタイミングで総入れ歯を考えればよいの…
総入れ歯を考えるなら「歯の状態」が重要
総入れ歯を考えるのは、年齢ではなく歯の状態のほうが重要です。
総入れ歯の可能性がある歯の状態とは、
- 残存歯が非常に少ない
- 全体的に歯周病が進行している
- 重度の虫歯
などが考えられます。
このような場合には、残存歯が数本あっても、お口の機能全体を回復させるために、戦略的に抜歯をして総入れ歯やインプラント治療などを実施することがあります。
総入れ歯へ進める前に、複数の歯科クリニックに相談を
しかし、上記のような場合でも、残存歯を残してほかの治療方が出来る場合もあります。現在の歯科治療は進んでいますので、保存的な治療(歯を残す治療)を実施できる場合があるのです。
ただし、それはもちろん自分で判断はできませんし、歯科クリニックでも見解が違う場合があります。
総入れ歯を考えている方はできれば、2件以上の歯科クリニックで意見を聞くことをおすすめします。違う選択肢が見つかるかもしれません。
総入れ歯以外の選択肢もある
総入れ歯は、前述したように歯を失ってしまったときに第一選択となる治療です。保険診療も可能で治療期間もそれほど長くないのが特徴だからです。
しかし、一方では違和感を感じる、噛む力が弱いなどのデメリットがあることも事実です。そのデメリットをカバーでき、総入れ歯に代わる治療方法をご紹介します。
部分入れ歯とブリッジ
歯が残っていない場合には選択できない治療方法ですが、前述のように保存的な治療によって歯を残せた場合には有効な治療です。現在では、ブリッジと部分入れ歯を組み合わせて、多くの喪失した歯を人工歯で補えるようになっています。自分の歯をなるべく多く残すように努力することが大切になります。
インプラント治療
インプラントは、部分入れ歯やブリッジ、総入れ歯に代わる治療です。顎の骨に人工歯根を埋入して、独立して植立していますから、上記の部分入れ歯やブリッジのようにほかの歯に負担がかかることがなく、機能回復ができます。
総入れ歯の代替策「オールオンフォー」
また、総入れ歯の代わりの選択肢としては、「オールオンフォー」などと呼ばれる治療方法もあります。片顎に4本から6本のインプラント体を埋入してすべての歯列を支える治療方法です。
総入れ歯は粘膜(歯茎)しか支えがありませんが、オールオンフォーの場合、インプラントで支えられているため、噛む力が強くなります。また、多くの人は総入れ歯に対して違和感や異物感を感じますが、オールオンフォーでは、その感覚が少ないといわれています。少し前までは世界的なインプラントメーカーである、「ノーベルバイオケア社」のみが特許を持ち、おこなっていましたが、現在では複数のメーカーで同じ原理のインプラントシステムを発売しています。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントと総入れ歯の中間、取り外しできる人工歯
インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントと取り外し式の総入れ歯の中間といった位置づけです。上記のオールオンフォーでは、埋入したインプラント体に上部構造(人工歯)の部分が固定されています。歯科医院では特殊な器具を使用して取り外すことはできますが、自分で取り外すことはできません。
一方で、インプラントオーバーデンチャーの場合は、オールオンフォーと同様に4本から6本のインプラント体を埋入して上部構造を支えていますが、上部構造は自分でも取り外しが可能です。もちろん、咀嚼時など容易には外れないようにしっかりと固定されていますが、取り外して清掃が出来ることは有意義と考える人も多くいます。また、特に高齢者にとっては取り外しが出来ることによって、精神的に安心するという場合もあるようです。
「歯が少なくなってしまった=総入れ歯」ではない
さまざまな選択肢があることを知る
総入れ歯は歯がなくなった場合に非常に有効な治療方法です。しかし、違和感や噛む力が弱いなど、さまざまなデメリットもあります。20年程度前であれば、歯を失ってしまった、あるいは数本しか無い場合には、ほとんど総入れ歯しか選択肢がありませんでした。しかし、現在では症状によりますが、それ以外に多くの選択肢が用意されています。歯が少なくなってしまったからといって、必ずしも総入れ歯しか道がないということではありません。
まずは予防が必要、早めに歯科クリニックに相談を
総入れ歯に限らず、どのような治療でも自分の歯に勝るものはありません。インプラント治療も万能ではないのです。自分の歯を守るためには、まず予防をすること、ブラッシングや歯を失わないため早めに歯科クリニックで治療することです。これは、「もう歯が少なくなっているから」と諦めずに、先延ばしにせずに、早急におこなうことです。総入れ歯のことを考えている方は、早急に歯科クリニックで相談をしてください。残存歯を残せる可能性、総入れ歯以外の選択肢があるかもしれません。
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