インプラントの基礎知識|5つのメリットと5つのデメリットを解説
インプラント治療は、事情があって歯を欠損した場合に行う治療方法のひとつです。歯に異常がある場合の治療法は、ほかにも入れ歯やブリッジなどの選択肢がありますが、インプラントにすることはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は基礎知識とともに、メリット・デメリットについてご紹介します。
インプラント治療とは
インプラント治療とは、歯槽骨にチタン製のインプラント(人工歯根)を埋め込んだ上で、人工の歯を固定する治療方法のことです。
歯根とは、歯の下にある歯槽骨(アゴの骨と歯を結ぶ骨)に入っている部分のことです。
チタンが使われるのは、人間の体に比較的なじみやすい物質といわれているからです。
虫歯や事故、ケガなどが原因で歯が欠けたり失ったりした場合によく使われる治療方法で、残りの歯にかかる負担が少なく、見た目や機能面において天然の歯に近い状態へ修復できるのが特徴です。
インプラントは外科的手術で埋め込む
インプラントを埋め込むには、外科的手術が必要です。安全に手術を行うためにも、治療内容について医師と十分に話し合い、事前にしっかりした診察・診断が必要です。歯槽骨の状態や、神経や血管の把握など細かく調査をしてからの手術になるでしょう。
インプラント治療以外の治療法との比較表
歯の治療は、インプラント以外に入れ歯やブリッジという選択肢もあります。それぞれの治療で得られるメリットやデメリットは、どのような違いがあるのか比較してみました。
インプラント | 入れ歯 | ブリッジ | |
---|---|---|---|
噛み心地 | 天然の歯に近く、固いものも噛みやすい。 | ぐらつきが起こりやすく、以前の状態に比べて噛む力も減少しやすい。入れ歯装着時は違和感や異物感を感じることも多い。 | 天然の歯に近い噛み心地はあるが、食べたものが挟まりやすい。 |
外れる心配 | 歯槽骨に固定されるため外れる心配はほとんどない。 | 外れる心配は常にある。 | 基本的に外れる心配はないが、歯に負担がかかると折れることがある。 |
見た目の美しさ | インプラントに取り付ける上部分の形や素材を選べるため、自然な見た目に仕上がる可能性が高い。 | 部分入れ歯の場合は留め金具(クラスプ)が目立ち、総入れ歯は不自然な印象になりやすい。
※クラスプとは、部分入れ歯と天然の歯とをつなぐために、部分入れ歯から出ている金属やワイヤー製のバネ。 |
見た目の違和感はあまりない。 |
歯槽骨への影響 | 咀嚼するたびに噛む力がアゴの骨から脳へ伝わり、歯槽骨の吸収を抑える効果が期待できる。 | 脳は異物と認識しやすく、長期間の装着になるほど圧迫を受け、歯槽骨も吸収されやすい。 | 脳が異物を認識しやすく、長期間の装着になるほど圧迫を受け、歯槽骨も吸収されやすい。 |
治療にかかる期間 | 4~8ヵ月。ただし歯の状態によっては、1日で仮歯を装着できるケースもある。 | 単純な治療であれば短期間で完了する。 | 単純な治療であれば短期間で完了する。 |
治療にかかる費用 | 自由診療のため、クリニックにより治療費は異なる。
※ただし高額医療費として医療費控除が申請できる可能性がある。 |
一部を除き、基本は保険診療の範囲内。 | 基本は保険診療の範囲内。
※ただしブリッジの素材によっては自由診療となる。 |
治療できないケース | 糖尿病、腎不全、肝炎、心臓病、ぜんそく、リウマチ、骨粗鬆症などを抱えている場合や、子ども、妊婦は治療ができないことがある。 | 特になし。 | 特になし。 |
インプラント治療5つのメリット
インプラント治療は、ブリッジや入れ歯にはないメリットが多数あります。
- 噛み心地のよさ
- 治療した歯が外れる心配がほとんどない
- 見た目にも自然な仕上がり
- 歯槽骨の減少を抑える
- ほかの歯への影響が少ない
噛み心地のよさ
インプラント治療は歯槽骨にインプラントを埋め込んだ上に人工の歯を取り付けます。埋め込んだインプラントは時間とともに歯槽骨と結合して定着します。定着することでしっかり固定するため、歯を支える力も天然の歯とほとんど変わらずにすみます。治療完了後は、元の歯に近い感覚で食べ物を味わうことができるため、ほかの治療法に比べ固いものも噛みやすいといわれています。
ブリッジのようにクラスプ部分に食べたものが挟まる、という心配もないので、気になって食事や会話が楽しめないというリスクを減らす効果も期待できます。
治療した歯が外れる心配がほとんどない
歯槽骨にインプラントを埋め込み、しっかり固定するインプラント治療は、治療した歯が外れる心配もほとんどありません。入れ歯のように、外れることやぐらつきを気にして不安になる、という機会は極力減らすことができるでしょう。
見た目にも自然な仕上がり
入れ歯やブリッジの場合は見た目にも違和感や、ともすると老けた印象になることもありますが、インプラント治療をした場合は自然な仕上がりになることが多いです。取り付ける人工の歯や土台部の素材に選択肢があり、天然の歯に近い見た目の素材を選べる可能性が高いからです。
歯を失っても以前に近い状態を取り戻しやすい
インプラントは入れ歯やブリッジと違い、人工の歯をつくる治療方法です。事故やケガなどで根元から歯を失ったとしても、ほかの歯やアゴの状態によっては以前に近い状態まで補える可能性があります。
歯槽骨の吸収を抑える
入れ歯やブリッジは脳が異物だと認識し、長期間装着すると歯茎が圧迫され続け、歯槽骨の吸収が起こりやすくなります。歯槽骨が吸収されるということは、アゴの骨が減少するということです。歯槽骨が減り続けると、最後には顔がくぼんだような状態になる可能性があります。
インプラント治療では、インプラントを天然の歯のように歯槽骨にしっかり埋め込むため、脳も異物と認識する可能性は低いです。噛んだときの力も、天然の歯で咀嚼したときのように骨から脳へと伝わり、歯茎を健康に保ち、歯槽骨の減少を防ぐ効果が期待できます。
ほかの歯への負担が少ない
インプラント治療は基本的に欠損した部分だけを修復するので、ほかの健康な歯への影響が少ないのもメリットです。部分入れ歯だと、クラスプを引っ掛けるために利用する歯が弱るリスクがあり、ブリッジも健康な歯を削ってことで欠損した歯を補う必要があります。ほかにも、入れ歯やブリッジのせいで虫歯ができるリスクもありますが、インプラントは極力ほかの歯への影響を抑えられると考えられます。
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インプラント治療5つのデメリット
見た目や機能でメリットの多いインプラント治療ですが、治療にかかる期間や費用についてはデメリットと感じることもありそうです。
- 数か月は治療が必要
- インプラント治療ができないケースもある
- 手術に伴うリスクやトラブルの可能性
- 自由診療のため全額自己負担
- インプラント治療後もメンテナンスが必要
数か月は治療が必要
インプラント治療の場合、大体4~8か月くらいの治療期間が必要といわれています。手術をして歯槽骨にインプラントを埋め込んだあとも、インプラントが歯槽骨と結合し、定着しないと次の人工の歯を取り付けるというステップには進めないからです。
アゴの骨の厚みや形状は人によって異なるため、噛み合わせのチェックにも時間がかかりやすいです。
1日で仮歯まで装着できるケースも
ほかの治療法に比べ、ある程度治療に時間が必要なインプラント治療ですが、状態によっては「即時インプラント治療」ができる場合もあります。即時インプラント治療は、骨がしっかりしていれば1日で仮歯まで装着できるという方法です。ただし、クリニックによって対応している場合としていない場合とがあります。
インプラント治療ができないケースもある
インプラント治療に限らず、手術をするにあたって安全性を確保するためにも、健康な体であるかどうかは重要です。
例えば糖尿病や骨粗鬆症は、重度のケースになると骨の強度が弱くなり、インプラントが歯槽骨に定着しないことや、術後の治癒が思うように進まないなどのリスクがあります。病気の程度や体の状態によっては、治療できないと判断されるケースもあるでしょう。
ただし、病気を抱えていても薬でコントロールをしている場合や、服薬を中断しても骨の強度が手術に耐えられる硬さがあると判断されればト治療ができる場合もあります。
いずれにせよ、主治医との相談になるでしょう。
インプラント治療に慎重な判断が必要といわれる病気の例
- 糖尿病
- 腎不全
- 肝炎
- 心臓病
- ぜんそく
- リウマチ
- 骨粗鬆症
- 高血圧
成長期の子どもはインプラント治療を控えるのが一般的
子どものインプラント治療は、骨の成長が止まる18~20歳ごろになってから行うのが一般的です。
成長期は、アゴの骨の厚みや形が変化する可能性が高く、治療をしてもインプラントがずれることや、他のインプラントにあたってトラブルを引き起こす可能性があるからです。
妊婦も卒乳するまでインプラント治療は控えるのがベスト
妊婦の場合もインプラント治療は控えるのが一般的です。インプラント治療では抗生剤や痛み止めを服用するので、胎児へ悪影響を与えるのを防ぐためです。出産後も、授乳期間が終わるまでは治療を控えるほうがいいでしょう。
手術に伴うリスクやトラブルの可能性
インプラント治療は外科的手術なので、神経を傷つけて麻痺が残る、血管を傷つけて大量に出血するといったリスクがゼロではありません。
ほかにも、手術中は部分麻酔によって痛みを感じる可能性が低いですが、人によっては術後に強い痛みや内出血、腫れなどを起こすことがあります。
まれに体質に合わない場合もある
全体からみると少数ですが、まれに治療をしてもインプラントが歯槽骨に定着せず、ぐらついた状態のままになるケースがあります。原因は体質によるもののほか、虫歯だった場合は長期間放置したことで周辺の骨が元の状態に戻りづらくなったことが関係することがあります。
自由診療のため全額自己負担
インプラント治療は自由診療なので、健康保険が適用されません。つまりどのクリニックでも治療費は全額自己負担です。
費用の相場は30~50万円といわれていますが、治療費がいくらになるかというのも、クリニックが独自に設定できるため、バラバラです。診察や治療の方法、どのような素材を使用するかなどによっても費用は異なります。
費用のことだけ考えると、安いクリニックを探したいところですが、インプラント治療は手術を行うので執刀医の経験や実績、施設の設備などをチェックすることも大切です。
高額医療費の対象になるケースもある
基本は自費での診療となるインプラント治療ですが、高額医療費の対象でもあります。一般的には治療費が10万円以上200万円までであれば、医療費控除の申請ができます。
デメリット(5)インプラント治療後もメンテナンスが必要
インプラント治療は手術が終われば完了というわけではありません。歯磨きやデンタルフロスといった毎日のケアをはじめ、数か月ごとにクリニックでのメンテナンスも必要です。
メンテナンスやケアを怠るとトラブルを引き起こすことも
いくらインプラント治療で天然の歯に近い状態をつくれるとはいえ、放っておくとインプラント周囲炎と呼ばれる炎症を起こすことがあります。インプラント周囲炎は歯周病に似た症状が特徴で、歯茎の腫れや出血を起こします。症状が進行すると歯槽骨が吸収され、せっかく入れた人工歯根が取れてしまうリスクもあります。
炎症を起こすまではいかずとも、治療後のメンテナンスを怠ることは口臭の原因にもなりやすいです。食べかすが歯垢になる場合や、インプラントと人口の歯とを連結する部分に歯垢や雑菌が入り込むことがあるからです。
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まとめ
インプラント治療とは元の歯の状態へ近づける修復法
インプラント治療とは、人工歯根であるインプラントを埋め込んだ上で人工の歯を取り付ける治療法です。従来の治療法に比べてメリットが多く、ほかの歯への影響を最小限にして、見た目・機能ともに天然の歯に近い状態に修復できる可能性があります。
見た目と機能面のメリットは大。ただしデメリットも考慮して判断を
一方でデメリットもあり、インプラント治療にかかる期間や費用はある程度心づもりが必要です。トラブルのリスクもあることを念頭に、主治医と相談の上納得して治療をすることがポイントとなりそうです。
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