インプラント治療の欠点|治療前後で考えられるデメリット
歯科インプラント治療は、機能性、見た目ともに自然な歯に近い状態を取り戻しやすいというメリットがある反面、欠点もいくつかあります。メリットだけでなくデメリットともいえる欠点も知っておくことで、治療について十分検討して開始することもできるはずです。
今回は、主に治療面と費用面とで考えられるインプラント治療の欠点を解説します。
インプラント治療の3つの欠点
(1)外科的手術が必須
歯科インプラント治療の欠点のひとつは、入れ歯やブリッジ、義歯などの治療と異なり、外科的手術が必要になることです。歯科インプラントは人工歯根なので、アゴの骨に埋入する工程が必要になるからです。
部分麻酔を使うので、手術中に痛みを感じることはほとんどないと考えられますが、麻酔である以上不安を感じる人もいるでしょう。手術後も、人によっては痛みや腫れ、内出血を伴うこともあります。症状の多くは一時的なものですが、落ち着くまでは注意が必要です。
(2)失敗のリスクがある
多少なりとも治療にリスクを伴うことも、インプラント治療の欠点と考えられます。歯を抜く、削るだけでなく手術が必要になる以上、100%成功するとは限らないからです。インプラント手術で起こり得るリスクは、主に血管や神経の損傷や、上顎洞の粘膜を損傷することなどがあげられます。
インプラント埋入時の血管や神経の損傷リスク
インプラントの手術は歯科インプラントを埋入するために行いますが、血管や神経にも手を加えることになるため、誤って傷つけるリスクがあります。神経や大きな血管を傷つけると、麻痺や感覚異常などの障害や、大量出血を引き起こすかもしれません。
ただ、現在のインプラント治療は、CT技術の発達やシミュレーションソフトやシステムの導入により、立体的に骨や血管、神経の位置・状態を確認できるようになっています。以前のようにレントゲン画像だけで診断、手術をする場合よりは、リスクは低くなっていると考えられます。
奥歯のインプラントは上顎洞の損傷リスクも
上顎洞粘膜の損傷リスクは、上アゴの奥歯を治療する場合に考えられるリスクです。上アゴの奥歯を治療する場合、骨量が少ないと上顎洞の粘膜を押し上げてインプラントを埋入することになります。ですが粘膜は非常に薄く、破れたり炎症を引き起こしやすい組織なので、手術によって損傷する可能性があります。
上顎洞の粘膜を損傷すると、インプラントの脱落や上顎洞の感染を引き起こすこともあります。感染が重症化すると、耳鼻科での治療が必要になることもあります。加えて、現在のところ上顎洞の損傷を完全に防ぐ手立てはないといわれています。リスクを含め、歯科医師と相談し、慎重に判断する必要があるでしょう。
前歯のインプラントは希望していた仕上がりにならないことも
完ぺきな仕上がりにならない可能性があることも、インプラント治療の欠点となるかもしれません。前歯の治療を行う場合は、見た目の仕上がりが満足いくかどうかも重要なポイントですが、歯の状態によっては希望通りの仕上がりにならないこともあるからです。
仕上がりに満足できるかどうかは、歯科医師と十分なコミュニケーションが取れるかどうかによっても左右されるものです。歯科医師の説明不足や、患者側の期待が高すぎる場合は、お互いのイメージにすれ違いが生じやすくなります。インプラント治療を受ける際は、納得するまで歯科医師に相談し、説明を聞いてから治療を開始しましょう。
(3)歯の状態、体質、年齢で制限を受ける可能性も
歯の状態や健康状態によってはインプラント手術が受けられないケースがあるのも、インプラント治療のデメリットです。インプラント治療は骨にインプラントを結合させなければならないので、骨がもろく、弱った状態だと治療が進まない可能性があるからです。
ただし、持病があっても投薬でコントロールしている場合や、服薬を一時的に中断しても骨の強度に問題ない場合は治療できることもあります。一般的に、重度の糖尿病や骨粗しょう症の持病がある場合は主治医に相談してからの治療になるでしょう。喫煙者の場合も生活習慣を改善してからでないと治療が受けられないことがあります。
その他、口腔内の衛生状況が悪い場合やインプラントを埋入するために十分なアゴの骨のスペースがない場合、骨の厚みが薄い場合なども、そのままでは治療が困難です。事前に歯科矯正や骨量を増やす処置をしなければ治療ができない可能性があるでしょう。
成長期の子ども、妊娠中の女性はインプラント治療が困難
インプラント治療は、成長期の子どもは治療の対象外という欠点もあります。歯科インプラントを埋入すると、埋め込んだ部分の骨の成長が妨げられるためです。成長期の過程にある子どもは、アゴの骨の形や厚みなどが変化しやすいため、埋入したインプラントのズレや他のインプラントとぶつかるなどの問題が起こりやすくなります。
アゴの骨の成長は一般的に18~20歳で止まるといわれています。成長が落ち着いてから治療を開始するようにしましょう。成長期の子ども以外に、妊娠中の女性も治療は受けられません。インプラント治療は、手術のあと痛み止めの薬や抗生物質を服用することになります。妊娠中はお腹の赤ちゃんのため、薬の服用は控える時期です。問題を起こさないためにも、出産後も授乳が終わる時期までは治療を控えたほうがいいでしょう。
まれにインプラントが体質に合わないこともある
インプラント治療は手術によってアゴの骨(歯槽骨)にインプラント(人工歯根)を埋め込みます。埋め込んだインプラントは、時間の経過とともに骨と結合し、定着します。ですが、まれに経過観察をしても骨とインプラントとが結合しないケースがあります。体質によるものや、虫歯などを長期間放置したことによって起こることもあります。
骨との結合がうまくいかない場合は、別の対処法を検討しなければなりません。中には解決が難しいケースもあるので、歯科医師との相談が必要です。
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インプラント治療後に起こり得る3つの欠点
(1)インプラントの感染リスク
手術に成功しても術後の感染リスクがあるのもインプラント治療の欠点です。代表的なトラブルはインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は歯周病に似た症状を持つ、細菌感染が原因で起こる病気です。感染すると、炎症や骨吸収を引き起こします。インプラント周囲炎は歯周病より進行しやすいのに対して自覚症状に乏しく、気づいたときには重症化していることも多いので注意しなければなりません。最悪の場合、インプラントの脱落につながる可能性もあるからです。
インプラントが細菌感染しやすいのは、細菌を深部まで侵入しないようにする歯根膜がないことや、インプラントの表面がわざとザラザラになっていることが影響していると考えられます。ザラザラの表面は骨との結合を強めるためですが、その分少しでも露出すると細菌のかたまり(プラーク)が繁殖しやすくなるからです。
インプラント周囲炎に感染しても、初期段階なら抗生剤の投与が行われるのが一般的です。ですが、現在のところ治療によって炎症の進行スピードを遅らせることはできても、完全に炎症や骨吸収の進行を止められないといわれています。無自覚な場合は積極的な除去は必要ないものの、症状の度合いによってはインプラントを一旦除去しなければならないこともあります。
(2)定期的なメンテナンスの手間がかかる
歯科インプラントは治療が終われば完了、といかないところも欠点と考えられます。快適な生活を送るためにも、歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどによる日ごろのケアはもちろんのこと、歯科医院で噛み合わせのチェックやクリーニングが必要だからです。
とはいえ、ほかの健康な歯も、こまめなケアや定期的に歯科医院で診てもらうことで、清潔な状態を保ちやすくなります。インプラント周囲炎を防ぎ、ほかの歯の健康にもつながるでしょう。を防ぐことにもつながります。
(3)インプラント治療後、口臭がひどくなることも
歯科インプラントによる治療は、見た目の仕上がりの良さが魅力です。ですが中には、治療後口臭がきつくなる人もいるようです。せっかくきれいな見た目を手に入れて欠点がなくなったのに、口臭がひどくなれば再び欠点が生まれたようなもの。
ただ、口臭が起こる原因は、食べかすや歯垢が詰まっている、インプラントと人口の歯との連結部分が緩んで雑菌が繁殖しているなどが考えられます。こまめなブラッシングやクリーニングで防ぎましょう。
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インプラント治療における経済的な2つの欠点
(1)インプラント治療費用は高額になりやすい
インプラント治療は費用が高額になりやすいという経済的な欠点もあります。治療費用が高額になるのは、ほとんどが健康保険適応外の自由診療として全額自己負担になるためです。定期メインテナンスも保険適用外なので、トータルで考えても入れ歯やブリッジ、義歯などの費用とは差が大きくなるでしょう。
歯科医院によっては分割払いやローンが利用できますが、費用の工面や支払い方についてはあらかじめ考えておくことが必要です。
歯科医院によってインプラント治療費用は異なる
入れ歯や義歯、ブリッジのように厚生労働省が決めた報酬点数がないインプラント治療は、歯科医院ごとに費用が異なります。クリニック選びに悩むことや、地域によっては遠方まで通わないといけない可能性があるのも欠点になることがあるでしょう。
インプラント費用の相場は1本あたり30~50万円ですが、都市部では相場より高い傾向があります。歯科医院ごとに検査費用、手術費用、人口の歯の素材などによって治療費用はさまざまなので慎重に選ぶことが大切です。歯科医院を探す際は信頼がおける人から紹介してもらったり、口コミやインターネットで広く情報をチェックしてじっくり吟味しましょう。
(2)治療期間が長引きやすい
インプラント治療は入れ歯やブリッジ、義歯などに比べて治療期間が長くなりやすいことも欠点と考えられます。治療期間が長引けば、その分費用もかかるからです。歯や健康状態によって異なるものの、手術をして歯科インプラントを埋め込み、骨と結合してから人口の歯を被せるという工程には、3~6ヵ月程度かかるのが一般的です。
骨造成のような特殊な処置が必要になる場合は、さらに長引くこともあるでしょう。ただし、歯の状態によっては手術後すぐに仮歯の装着までできるような、短期間でインプラント治療を完了できる場合もあります。歯科クリニックによって、治療方法や方針はさまざまなのでまずは相談してみてください。
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インプラント治療にはもちろん利点もある
ほかの歯への負担、審美面と機能性の高さはインプラントの魅力
経済的なデメリットを含め、歯科インプラントの治療には欠点がありますが、上回るほどのメリットもある治療方法です。
その理由は、入れ歯やブリッジとは違って1本から治療が可能ですし、根元から失った歯を回復することもできるからです。治療が必要な歯だけインプラントを埋入できるので、周囲の健康な歯への負担も極力減らせるのも入れ歯やブリッジと異なる点です。加えて、見た目の仕上がりや噛み心地も元の近い状態まで回復できることが多いです。
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インプラント治療は欠点も合わせて考慮を
歯科医師と相談し、デメリットも合わせて総合的に判断しよう
インプラント治療は手術に伴うリスクや、術後の感染、メンテナンスの問題などいくつかの欠点があります。人によっては健康状態に左右されるケースもあるでしょう。加えて、自由診療で歯科医院ごとに治療費用が異なることや、治療にかかる期間が長いこと、定期メインテナンスが必要なことなども、欠点になる場合が考えられます。
とはいえ、一本だけでも治療が可能であることや、見た目の美しさ、噛み心地の良さなどは入れ歯やブリッジでは得にくいメリットです。納得し、満足いくインプラント治療を行うには歯科医師との相性も大切です。インプラント治療を行う際は歯科医院選びを慎重に行い、歯科医師とも十分に相談した上で治療を開始しましょう。
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